数ヶ月前の出来事である。
直接の知り合いではないが、なんかの席で一緒になった人がこんな事を言った。
「僕はね、インターネット環境なんてモノを子供には絶対与えない!」
どうやら酔っぱらっている様で、軽い興奮状態にあるようだ。
「へー、そうなんですか」と軽く相づちを打っておくことにした。
しかし、どうも持論をその場で語りきりたいみたいで勢いは止まらない。
「大体、あんなモノはブームで終わるべきだったんだよ!」
「オタクの間でやりとりしてりゃあよかったんだ!」
「あれは子供の想像力を奪うばかりか悪い影響しか与えない!」
「だから僕は
会社からしかネットというモノを見ないんだ!(←重要なフラグである。)」
どうやら根本的に大きな誤解というか、
どっかのバカ評論家か何かが書いた「インターネットは悪」的な本を鵜呑みにしてるのか
言うてることがもうムチャクチャなんである。
インターネットというモノは「新しい媒体」であって、ブームもクソもない。
放送網とか鉄道網とかの概念に近いものである。
そりゃその上に乗っかった「薄型テレビブーム」とか「レトロSLブーム」なら
ブームだなぁ、と理解できるかもしれんが。
でもまあ、色んな考え方の人がいて当たり前なので
「へー、そうなんですかぁ」と相づちを打っておくことにした。
しかし、その怒りの矛先をどうやらオイラの仕事に向けたいらしい。
「キミはホームページとかを作ってるんだよね?」
「はぁ、まあそうですが」
「じゃあ
エロサイトとか風俗店のページなんかも作るの?」
「インターネットは悪!」と言ってるわりには
そういうモノの存在を知ってるんだなぁ、と
いうのは心の中に置いておく事にして
「作った経験はないですが、仕事という事なら受けると思いますよ」
と答えた瞬間、彼の何かに火が付いたらしい。
「それだ!それだよ!君たちみたいなヤツがいるからダメなんだ!」
「
モラルより金が大事なんだよね。そうなんだ」
まあ、これぐらいで怒ってたら大人ではないので
「
そういう場面もあるんじゃないですか、人生には」と答えておく事にする。
どうやら納得できないらしい。
「自分の子供が自分の部屋からそういう変な所にアクセスしたらどーするの?」
「だから僕はイヤなんだ!子供にパソコンを買い与えるなんて!」
つーか、いまや漫画喫茶にでも行けば
ネット環境なんかザラにあるし、学校の授業でも取り入れられているのになぁ。
「いやだなぁ、こんな親」と思いながら
「はぁ、まあそうかもしれませんねぇ」と相づちを打っておくことにする。
ただ、次の一言が余計だった。
「君みたいな人がいなくなれば健全な世界になるんだよ!」
もうこれは「酔っぱらいの戯れ言」で済ませられるレベルを超えた。
言うなれば「プライド」の問題である。
撃墜命令。拘束制御術式「クロムウェル」第零号開放である。
「いやね、本当に子供が生まれたら君はどーするの?パソコン買い与えるの?」
「もし僕に子供が生まれたらですか。もちろんPCは買い与えますよ」
「へーーー」
「ただし」
「自分の家からネットさせるにあたっては、僕の思い通りにできるからかまわないですよ。
それこそ自分の子供がなんて言葉で検索してるのか、どんなファイルを見てるのか
どんなサイトを見てるのか、どんなメールをやりとりしてるのか
究極ですが、なんて言葉をキーボードで打ち込んでいるかまで把握できますから」
「え!子供のパソコンを勝手にみるんだ?」
「いや。そんな事すらしなくてもいくらでも方法はあるんですよ。
『エロ』とか『風俗』というNGワードをかけて検索不能にもできるし
僕がネットワーク管理者である以上、そんな事はいくらでも可能ですよ。
プロキシサーバーさえ立ててしまえば、どうとでもできるし
子供のPCのポート80をふさぐだけでもネット閲覧はできない。」
ただ、子供がそれ以上の知識をつけてきたらそれで終わりだが(笑)
プロキシサーバーのルート権限をお互いの部屋から奪おうと戦う親子。
子供のPCの検索ワードに「porn free」とか「尻有」の文字を見つけ
「なかなかやりおるのぉ」とほくそえむ父。
やおらあらゆるポートにpingを打ってくる子供。
夕食時に交わされる会話。
子: 「パパもなかなかやるね」
父: 「いや、お前もなかなかなもんだな」
二人: 「はははははははは!」
母: 「まあ、二人して何の話?楽しそうねぇ」
子: 「ううん、男と男の戦いだよねパパ?」
父: 「ああ、そうだな。ガッハッハッハッハ!」
考えただけでも爆笑してしまうんだがw
「あなたは会社からしかネットをしないと言いましたね?
会社にネットワーク管理者という人はいませんか?」
「・・・・いる」
「たぶんその人はあなたがどういうサイトを見ているか
どんなメールを送っているか全て把握していると思いますが」
「な、なに!そんなの犯罪じゃないか!」
「
業務のみに使っているならばうろたえる必要はないかと思いますが?」
「え・・・・・・・」
「それこそ
さっき言ってたエロサイトとか風俗店なんか致命傷なんちゃいますかね~
それで
業務怠慢で解雇された人、何人も知ってますけどね。」
明らかに顔色が変わった。
「そ、それって僕のパソコンを僕がいない時に見てるって事・・・?」
「いや、そうじゃないんですよ。
ネットワーク管理者のPCにはそういうモノを
一覧で表示できるツールがあったりするんです。
エクセルで一覧表にしてプリントアウトも可能ですし
それを月末に報告書として提出している所もありますよ」
「だいたいね」
ここらでトドメさしとく事にする。
「国が率先してインフラ整備を進めているモノを、あなたのその貧弱な知識で
頭ごなしに『ダメ』だと言われる子供の気持ちを考えたことありますか?
僕はさっき言った事までやる気はありませんが
歯止めがきかない子供を正しい方向に導いてあげるのが親の務めではないんですか?
知識さえつければどうにでもできる物を、勉強すらせずに
『オレは嫌いだから』という理由だけで導入しない親を子供が尊敬しますかねえ。」
こういうときは大人になれないオイラである。
「お前みたいなヤツがいなくなればいい」とまで言われたんだ。
こう言ってやってもいいだろう。
「あなたみたいな人がいなくなればもっとネットのイメージも良くなるんですよ」
すっかり酔いも醒めたらしい。
何かを必死に考えている様子だ。
ここでオイラの性格の悪さが出る。
オレも一言余計な性格なんです。
「で、どこの風俗店のサイトがよかったんでしたっけ?」
・・・・・・・・・・・・・・
彼があれ以降、どうなったかまでは知らない。
しかし、世の中という物は常に変わり続けるものだ。
それに付随した「学習」というものを怠っておきながら
貧弱な持論を押しつけると言うことだけはしたくないもんである。
だってね。
そういう世の中になってしまったんだもの。
受け入れて向かい合うしかないじゃないですか。
そのために学習が必要なのは当然のこと。
ましてや自分の可愛い子供のためならなおの事ですわ。
オイラはどんな事でも一緒に学んでいく覚悟です。
女の子が生まれたらギャル文字だって読めるようにね(笑)
インターネットという物。
正しく使えばこんなに素晴らしい物はない。
そんなある日の戦いの記録でございましたとさ。
{XT_LOG_CONT}
{OTD_MAIN}